8月 212014
 

東洋経済オンライン によると。

アベノミクスでも注目を浴びる、「女性の活用」。一見、聞こえのいいこの言葉、実は大きな問題をはらんでいるという。本連載では、そんな「男と女」にかかわるさまざまな問題を、異色の男性ジェンダー論研究者が鋭く斬る。
前々回は渋谷区教育長の発言を、前回は味の素のCMを、固定的性役割分業を助長するものとして批判しました。今回はがらっと雰囲気を変えて、ちょっと「ゆるい」というか、変わったネタから入りましょう。 通勤電車に乗っていると、男性の車掌が妙な鼻声でアナウンスすることがありますよね?  普段からあんな声でしゃべる人はいないのに、なぜあんな変な声を出すかご存じですか?  答えは、男性が普通の声でアナウンスすると、電車の走行音に紛れて声が聞き取りにくくなるからなのです。

 その点、最近増えてきた女性の車掌さんの声は、とても聞き取りやすいように感じます。普段の会話のときより少し低めに落としているように思えますが、その分、落ち着いた印象を与え、なおかつそれでも男性より高いために走行音に紛れることもありません。

 だったら、なぜ女性の車掌はもっと多くならないのでしょう?  鉄道って運転士も車掌も、男性が多いですよね。実はこれには、歴史的な背景があるのです。

■ 「女性を守る」ために解雇された女性職員

 あまり知られていないことですが、終戦後、当時の国鉄では10万人近くの女性が働いていました。男性が兵隊に取られる中で、駅員、車掌、電話交換手、踏切手(踏切は基本的に手動でした)といった職種に大量に女性が雇用されていたのです。それが戦後、1947年の労働基準法制定に伴って、解雇されていきます。女性の深夜業(22時~5時)が禁止されたからです。

 女性の深夜業規制といっても、すべての職に適用されたわけではなく、例外がありました。たとえば看護婦(現在の呼称は看護師)。夜になったら病院中から看護婦がいなくなるなんてことが起きたら大変です。なので当然、例外扱い。面白いところでは、「エアガール」と呼ばれた、今のキャビンアテンダントも、国鉄と同じ運輸業ながら、深夜業規制はかかりませんでした。

 国鉄労働組合(国労)婦人部は、国鉄で働く女性たちも例外扱いとするよう求めたのですが、孤立した闘いをすることとなり、結局は原則適用。現在よりもはるかに夜行列車が多かった当時、24時間走り続ける鉄道の世界で夜働けないのでは勤まりませんから、復員してきた男性に置き換えられるように、解雇されたのです。女性労働者を保護するための法律が、結果として女性の職場を奪ったことになります。

 しかし最近は、女性の車掌や運転士を見かけることはもう珍しくはありません。新幹線の運転士にも女性がいます。シャベルで石炭をすくって釜に放り込むという重労働があった蒸気機関車の時代ならいざ知らず、レバーひとつで動く電車の運転に、男女の差異などあるわけがありません。それなのに最近になってようやく女性が増え始めたのは、1999年の改正労働基準法施行で、女性の深夜業規制が撤廃されたからなのです。

 男女雇用機会均等法の制定時(1985年)にも、女性の深夜業規制撤廃が議論の対象となりました。しかし労働側の代表が反対したこともあって、深夜業規制は維持されました。私の母親は定年までテレビ局のディレクターをしていたのですが、「結局、夜中まで働いても、自分だけ残業代がつかなかったり、持ち帰りでやらなきゃいけなくなる」と、ずっと不満そうでした。

 男女ともに深夜業を規制する、というのは、働く人にとって望ましいことかもしれません。しかし22時になったら電車がなくなり、コンビニも閉まる、などという社会に戻ることは残念ながらできないでしょう。だとすると、男女平等の観点から見たときに、次善の策は「女性のみの深夜業規制」ではなく、男女ともの深夜業規制撤廃なのです。そうしなければ、必ず雇用の入り口での、女性差別を生み出します。

 Posted by at 11:18 AM

 Leave a Reply

(required)

(required)

You may use these HTML tags and attributes: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>